おとうさんがいっぱいという本をご存知でしょうか?ジャンル的には児童文学になると思うんですが、友人に勧められて読んだ所、見事にトラウマになりそうです。
そう。この本は怖い!!ファンタジーかと思って読んでたら、突然訪れる背筋が凍りそうなバッドエンド!しかし読み終えた後に何度も何度も読みたくなってしまう不思議なクセを持つ本なのです。
著者は三田村信行という方で、全く存じ上げなかったのですが、早稲田大学の文学部なんですね。まさか先輩だったとは…。
そして調べてみるとなんとプレミアがついているではないですか!!なんだなんだ!一体この本はなんなんだ!と更に詳しく調べてみると…
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小説『おとうさんがいっぱい』 – 三田村信行 × 佐々木マキ・あらすじ
著者:三田村信行
イラスト:佐々木マキ
出版:理論社
ページ数:206
ある日、おとうさんが家で新聞を読んでいる時に電話がかかってきた。トシオは電話に出てからその奇妙な事実に気が付き足がすくんだ。電話の相手はおとうさんだったのだ。全国中のおとうさんが何人にも増え、それぞれが本物だと主張する。こまった政府は…。不思議な世界観で恐ろしい物語を綴る表題作を含めた5つの短編…
読書エフスキー3世 -おとうさんがいっぱい篇-
前回までの読書エフスキーは
あらすじ
書生は困っていた。「いい本残そう鎌倉幕府!クリックの夜明けぜよ!!」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。『おとうさんがいっぱい』のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…
おとうさんがいっぱい -内容紹介-
大変です!先生!三田村信行の『おとうさんがいっぱい』の事を聞かれてしまいました!佐々木マキがイラストをつとめているのですね!『おとうさんがいっぱい』とは一言で表すとどのような本なのでしょうか?
“児童文学の皮を被った大人向けホラー”デスナ。
…と、言いますと?正直な所『おとうさんがいっぱい』は面白い本なのでしょうか?
ぼくの心の世界には小さな窓が一つあってぼくは、ときどき、その窓から外の世界をのぞいてみます。
引用:『おとうさんがいっぱい』三田村信行著, イラスト:佐々木マキ(理論社)
コンナ一文カラ始マル“三田村信行 × 佐々木マキ”ノ1975年の作品デス。読メバワカリマス。
えーっと、それでは困るのです。読もうかどうか迷っているみたいですので。ちょっとだけでも先生なりのご意見を聞かせていただきたいのですが。
読む前にレビューを読むと変な先入観が生マレテシマイマスノデ…
ええい、それは百も承知の上!先生、失礼!(ポチッと)
ゴゴゴゴゴ…悪霊モードニ切リ替ワリマス!
うぉおおお!先生の読書記録が頭に入ってくるぅぅー!!
おとうさんがいっぱい -解説-
いやー、それがですね、これといってあまり本を読まなかったんですよ。読んだと言っても
かいけつゾロリとか
ズッコケ三人組とか…あとは学校の読書感想文に指定された本ぐらいですかね。好んで本を読む子供ではありませんでしたね。
そうですか。でも逆にそれならその時に読んだ本の事をよく覚えているのではないですか?
あー確かに。読んだ本の数が少ないですからね。読書感想文の時に読んだ本は不思議と今でも頭の中に強烈にイメージとしては残っていますね。「
アンクル・トム物語」を読んだんですがね、悲しすぎて初めて本を読んで泣きましたよ。
黒人奴隷の不遇な半生の物語ですね。確かにあれは子供には強烈なイメージを残すでしょうね。
ええ。子供ながらになんやねん。差別すんなやー!!って思いましたもん。もしかしたら僕の差別に対する嫌悪感が人より激しいのはあの本が影響しているのかもしれません。
ま、そういう感じでね、子供の頃に読んだ本って結構人格形成に影響すると思うんですよ。そこで今日の作品『おとうさんがいっぱい』の話になるわけですが…
ええ。ひとまずそういう事になっていますね。
難しい漢字は使われず、ひらがなが多いですし、ルビもしっかり振ってあります。そして時々、挿絵があって読みやすくはあるのですが…
この本は、「ゆめであいましょう」「どこへもゆけない道」「ぼくは五階で」「おとうさんがいっぱい」「かべは知っていた」という5つの短編の集まりなのですが…
ふむ…。どのタイトルもなんとなく不気味ですね。
すべて主人公は別の少年です。ミキオ、たかし、ナオキ、トシオ、カズミ。それはなぜだと思いますか?
もちろんそう考えるのが普通でしょう。ただこの作品には、最初に書き出しにぼくの窓から見た世界の紹介であると書かれているのだけれど、5つの物語にはある種、共通の世界観が流れています。主人公は少年であること。不思議な世界に突然襲われてしまうこと。そして理不尽な最期を遂げることという…
いや、ふふふじゃなくて!!どうなんですか。最後に死ぬ物語なんですか!?だから主人公が5人も必要なんですか?そういう事なんですか!?
ま、その辺は読んでもらう事としてね、それぞれが一体どんな話なのか。それを少しずつ紹介していきましょう。
まずいちばん目の作品「ゆめであいましょう」。これはまぁ、タイトル通り寝ている時に見るあの“ゆめ”についての話。
ダウンタウンとウッチャンナンチャンがやっていた番組みたいなタイトルですね。
それは「夢で逢えたら」でしょう。主人公ミキオは夢の中で必ず同じ人と出会います。夢の中なのでなんとなく覚えているような覚えていないような。
覚えていると言えば覚えている。覚えていないと言えば覚えていない。なんか書き方が村上春樹みたいですね。
あ。この作者、三田村信行は村上春樹と同じ早稲田大学の第一文学部ですよ。ま、それでですね夢の中で出会う同じ人というのが、徐々に成長していくわけです。最初は赤ん坊、次は5歳ぐらい、次は小学生一年生ぐらい。なぜかミキオの夢には必ずその子が出てくる。
では次の話「どこへもゆけない道」ですが。
え!?さっきの話の続きは!?夢はどうなったの!?
いやいや、これ短編ですからそれ以上話をしちゃうとネタバレになっちゃいます。なので同じ子と出会ってどうなったのか?どんな不遇なラストを迎えるのかは読んでからのお楽しみということで。
「どこへもゆけない道」にいきますよ。これは「ぼく」が帰り道にふとへんな事を考えたことから始まります。
お、主人公はぼくなのですか。それこそ初期の村上春樹っぽいですね。
――どうして、いつもおんなじ道ばかり通っているんだろう?――
その考えがどこからやってきたのか、さっぱりわからなかった。家へ向かって歩きだそうとして、ひょいとまえのほうを見たとき、向こうへ歩いてゆく人と人の足のあいだに見える歩道のしき石の一枚が、ぽこっとへこんでいるのが目にはいった。そのときふいっと、そんな考えが頭にうかんだんだ。
引用:『おとうさんがいっぱい』三田村信行著, イラスト:佐々木マキ(理論社)
ま、こんな感じでいつもとは違う道で帰ってみた所、家の中がおかしなことになってしまっていて元に戻そうといろんな道を行ったり来たりする話です。
今度はがっつりネタバレしちゃっているじゃないですか。
いえいえ、この話はその後の展開があるのでそこは伏せてますよ。こんな感じでねちょっとした思いつきで行った事が大変な事を巻き起こす感じの短編なのですよ、全体を通して。
なんとなく世にも奇妙な物語とか笑ゥせぇるすまんみたいな世界観なんですかね。
あぁー、後味の悪さは似ているかもしれませんね。次の「ぼくは五階で」なんてまさに世にも奇妙な物語でした。
いわゆる鍵っ子の話でして、学校から帰って来ても両親は仕事に行っていて、帰ってくるまで一人で待っている少年ナオキの話でしてね。マンションの五階に住んでいるんですよ。
共働きが多くなっている現代では決して珍しくない設定ですね。
まぁ、ナオキはちょっと親の愛情に飢えてそうな感じですけどね、鍵を渡された時は嬉しくって友達を呼んだりしたんですが、自分がいない間に他人が家にあがっている事を母親が嫌がったので、外で暇をつぶしたりしてね。
子供って思っているより大人に気を使うんですよね。
で、まぁ、今日は近所の公園で友達と野球をする予定だったので、母親が用意してくれたおやつを食べた後に、グローブを持って家を出ようとした所。…なんと家から出られないのです。
ん?家に鍵がかかってるんですか?いや、あれか鍵っ子だから鍵は自分で持っているんですよね。
正しくは家を出ても、そこがまた家の中なのです。玄関から外に出たつもりが、そこはまた家の中。様々な方法を試してみても、どうしても家から出られない。
なんと…。不思議な家に閉じ込められてしまうんですね。
電話で母親と父親に連絡してみたけれど、二人はナオキの話を信じてくれない。時間が経って両親が帰ってくる時間になった時、窓から覗いてみると確かに母親が5階まで昇ってきたのですが、いくら待っても家に入ってこない。ここは全く別次元の5階なのです。
でも世にも奇妙な物語とか笑ゥせぇるすまんってある種、人間の欲とかが生み出す不幸が多いじゃないですか。しかしこの短編集は一貫してそんな欲みたいなものは出てこない。本当に突然巻き込まれ、不遇な最期を迎える。
一体、子供はそれを読んで何を学んでいけば…。これ本当に児童文学なんですよね?
まぁ、なのでね児童文学の皮を被ったおとなむけの小説だと私は思いますよ。これ読むと子供の瞬間瞬間を大切にしなきゃなぁーって思いますもん。時々大人には理解出来ない事を言ったりする子供いるでしょう?その声にもっと真剣に耳を傾けなければって思います。
そうですねぇ。あ、表題になっている「おとうさんがいっぱい」はどんな話なんです?これはなんとなくおとうさんが不幸になる感じがするんですが…。
次の作品が「おとうさんがいっぱい」なんですがね、これはまぁ、突然おとうさんが増えるわけです。みんなそっくり。みんな本物。とりあえず名札をつけて1番のおとうさん、2番のおとうさん、3番のおとうさんなんて感じで対処はしたんですが。
ただ、この現象は主人公のトシオの家だけで起きた事ではなく、全国のおとうさんが増えてしまったのです。社長や国の大臣、評論家、教授などなど様々なおとうさんが増えて街はパニックになる。
うわぁ…。特に人の上に立つ人が増えると喧嘩とかが起きそうですね。ワシが社長だ、ワシこそ!なにを言っているワシにきまっている!!みたいな。
そんな現象が1週間ほど続いて全体の20%ほどのおとうさんが増加した後、現象はピタッととまったのです。しかし増えたおとうさんが消えたわけではなく、争いはたえない。そこで政府が行動を起こすわけですが…。
えー、今回もですか?ここだけ!ここだけでいいので教えてくださいよ!
政府はですね、各家庭の複数のおとうさんから一人だけをおとうさんとして認定して、それから漏れたおとうさんを国家の手によって別の人間として管理する事に決めたのです。そしてその認定者に選ばれたのがトシオなわけですが、トシオは一人のおとうさんを選びます。
ん?…そこまで聞くと今回はやはり不幸になるのは、トシオに選ばれなかったおとうさんたちであって、トシオは不幸な結末を迎えないじゃないですか?
ま、詳しくは読んでもらえばわかりますよ。個人的には一番モヤモヤしなかったラストではあるんですが…。
むむむ。で、次はラストですよね?「かべは知っていた」ってやつ。なんとなくこのタイトルを見ると諸星大二郎「
壁男」を連想するんですが…。
お。諸星大二郎をよく知ってますね。手塚治虫に「諸星さんの絵だけは描けない」と言わしめた漫画家の作品ですが、代表作ってわけでもなく地味目の作品だと思うんですが「壁男」って。あれも短編ですが。
いやー、昔ね、堺雅人が主演で
実写映画化されていたんですよ。それを観てちんぷんかんぷんだったんで、原作読んでみたんですが漫画はすげー面白かったんです。
まさにテーマはあれと一緒です。噂で壁に入り込んで生活している人がいるというのを聞いていたお父さんが、夫婦喧嘩の末に本当に壁に入ってしまって出てこれなくなってしまうっていうね。
あらら。まさに壁男じゃないですか。今回は少年はどこに出てくるのです?
壁男は声が出せませんでしたが、今回のお父さんは声が出せるんですよ。なのでね、主人公のカズミは壁の中のお父さんと会話が出来るんです。
へー。それであれですか?両親の喧嘩を取り持つみたいな?
カズミはお父さんが壁に入ってしまったのを見たんですが、母親はその瞬間を見ていないのでカズミの話を信じてくれない。お父さんは家出をしたんだって思っているんです。
お父さんは声が出せるわけだから、母親に話しかければ一発で信じてもらえるのだろうけど、意地でもそうはしない。お母さんを懲らしめてやるんだって感じで。
そのうち、お母さんは他の所で男を作ってしまいまして…。そしてお父さんも壁から出られなくてイライラして…。
カズミくんはいい迷惑じゃないですか…。いつだって大人は勝手だ。
まぁ、壁男の方は社会を巻き込んだ現象として描かれましたが、これはね、一つの家の中の出来事、カズミがすべてを背負うような感じで描かれています。
壁男も最期はバッドエンドでしたけど、これもそうなんですか?
壁男とはラストの迎え方がちょっと違いましてね、最後の作品にふさわしいラストみたいな、ちょっとスッキリとしたいいラストだと私は思いました。バッドエンドではあるんですが、少年の成長が見られる唯一の短編で、これを最後に持ってきてくれて良かったって思います。
ほほー。今すぐ、今すぐ読みたい!けどなんでこの本、プレミアついちゃっているんですか!?一時期1万円超えてましたよ!
電子書籍化されていればプレミアもちょっとは落ち着くとは思うんですけどねえ。この本は手元において度々読みたくなりそうなクセのある本なんですけどね。理屈じゃ説明出来ない理不尽さを通して何か大切なものを端々に教えてくれる良い本です。
よっしゃー、電子書籍化リクエストだー!いい本残そう鎌倉幕府!クリックの夜明けぜよ!!
批評を終えて
以上!白痴モードニ移行シマス!コード「ケムール・ミタムラ・ポルズンコフ!」
「いい本残そう鎌倉幕府!クリックの夜明けぜよ!!」…って、あれ?僕は一体何を…。
何をじゃないよ!仕事中に居眠りこいて!時代背景バラバラだよ!鎌倉と江戸だよ!
え?あれれ?読書エフスキー先生は?
誰だそれ。おいおい。寝ぼけ過ぎだぞ。罰として一人でここの案内やってもらうからな!
えーっ!?一人で!?で、出来ないですよ〜!!
寝てしまったお前の罪を呪いなさい。それじゃよろしく!おつかれ〜
ちょっ、ちょっと待って〜!!…あぁ。行ってしまった。どうしよう。どうかお客さんが来ませんように…。
…あのすいません、おとうさんがいっぱいについて聞きたいんですが。
(さ、早速お客さんだーっ!!ん?でも待てよ…)いらっしゃいませー!三田村信行と佐々木マキの作品でございますね。おまかせくださいませ!
あとがき
いつもより少しだけ自信を持って『おとうさんがいっぱい』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。
名言や気に入った表現の引用
「一杯の茶を飲めれば、世界なんか破滅したって、それでいいのさ。by フョードル・ドストエフスキー」という事で、僕の心を震えさせた『おとうさんがいっぱい』の言葉たちです。善悪は別として。
駅を出ていつもの道を家のほうへ向かって歩きかけたとき、ふと、へんなことを考えた。
――どうして、いつもおんなじ道ばっかり通っているんだろう?
おとうさんは会社で、おかあさんは学校で、いま、こうしてぼくが二人のことを思いだしているように、ぼくのことを思いだしてくれているだろうかと、ふとナオキは考えた。
二人とも、会社や学校では仕事がいそがしくて、ナオキのことなど考えているひまはないにちがいない。そうすると、会社や学校にいるあいだは、おとうさんもおかあさんも、ナオキのものではない、ということになるのだろうか。家に帰ってきてはじめて、二人はナオキのものになるのだろうか。
このへやは――と、ナオキはへんなことを考えた。一日のうちに、何度も生きたり死んだりしているみたいだな。
おれの一生は、まったくつまらないものでおわりそうだ。まったく、なんのためにこれまで生きてきたのか、わからない。考えてみりゃあ、ばかばかしい話さ。でもな、ふっと、こんなばかばかしいおれの一生でも、なにかに記録してとっておけば役に立たないもんでもないと、おとうさんは思ったんだよ。
引用:『おとうさんがいっぱい』三田村信行著, イラスト:佐々木マキ(理論社)
おとうさんがいっぱいを読みながら浮かんだ作品
作者:諸星大二郎
出版社:双葉社
掲載誌:COMICアレ!
発表期間:1995年11月 – 1996年9月
巻数:全01巻
やっぱり、諸星大二郎の『壁男』ですか。
先程も書きましたが、ラストの「かべは知っていた」という作品が諸星大二郎の壁男に似ていました。まぁこの漫画の発表年が1995年なので1975年に出ていた本作品の方が先で壁男の方が似ているという事なのでしょうが…。
レビューまとめ
ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。
さてさて。久しぶりにここまでクセの強い本を読みました。この本はいずれまた何度も読みたくなることでしょう。でもなぜこの本がここまでプレミアがついていたのか。
…僕は友人からこの本の存在を教えてもらったんですが、お笑い芸人のカズレーザーが『自分の子供に読ませたい5冊の本』って中でこの本をあげていたんですね。カズレーザー、頭むっちゃ良いんですよね。しかも調べたら、同い年だし、出身地クッソ近いの。知らんかったぁー。
ちなみに他の4冊は高村光太郎詩集、驚愕の曠野、ローマ人の物語、幼年期の終りでした。良いチョイスするなぁ。“自分の子供”に読ませたいだからね。子供の頃に読む必要ないもんね!
それと一応、ポケモンのバグとこの本の内容をかけた小説があるそうで。詳しくは探していただいたほうがわかりやすいとは思うけれど、面白かったのは、もともとポケモンがMOTHERをリスペクトしていて作ったゲームで…なんて話をあさっていると確かにこの世界観はファミコンのMOTHERだわ…と。MOTHERのホラーやトラウマ要素がこの本から感じられます。
あぁ。久しぶりにファミコン引っ張り出してくるかな。…ん?いや、確かゲームボーイアドバンスでMOTHER1+2が出ていたような。それならDSで出来るよね。ソフト探してみるか。
あ。すげープレミアついてやんの…。新品は20000円超えかぁ…。こういう世界観が好きな人ってやっぱりいるんだなぁ。
それにしても、本当におとうさんがいっぱいは良い本だった。佐々木マキの挿絵がいい味出しているんですよ。それが理由で児童文学になっているのかもしれませんが、これを読んで改めて「漢字」ってすげーなーって思いました。児童文学なのでね、ひらがなが多いんですよ。
でもひらがなってほぼ意味がない文字でしょう?音だけで追っている所があるから「きたなくせまかった店が」って書いてあって一瞬意味がわからなくて、「きたなくせ」「まかった店」ってなんだろう…うーむ。と考えてしまったもんね。汚く狭かった店ね。あーなるほどと。
そう考えると本当に日本語って素晴らしい。音と意味を両方備えて形成されているわけだから。もちろん正しく言えば他の言語も意味を持っている塊はあるんだけどね、漢字って推測がしやすい所がいいよね。だからまぁ、改めて日本語を使いこなしている外国人を見ると本当にすげーなぁーって思うんだけれども。
…あ。話がそれた。
おとうさんがいっぱい。ところどころ村上春樹チックな文章の書き方があります。どっちともとれるような書き方ね。私は今、ここに書いているのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。みたいな。そういう感じが好きな人もぜひ。早稲田の第一文学部の人って本当にこういう文章書く人多いんだなぁって思いました。
それにしても。ここまで綺麗にバッドエンドで不気味な終わり方なのに、全部を読んだ後の爽快感はなんなんだろう。本当に不思議なクセを持った本だ。この本を教えてくれた友人には礼を言っておこう。
ではでは、そんな感じで、『おとうさんがいっぱい』でした。
ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございます!
最後にこの本の点数は…
おとうさんがいっぱい - 感想・書評
著者:三田村信行
イラスト:佐々木マキ
出版:理論社
ページ数:206
おとうさんがいっぱい
¥ 1620
-
読みやすさ - 77%
-
為になる - 71%
-
何度も読みたい - 97%
-
面白さ - 91%
-
心揺さぶる - 92%
86%
読書感想文
子供が読みやすいように書かれてはいるのですが、普段から漢字の多い本を読んでいる人からすると逆にそれが読みにくいかもしれません。でも内容的には大人向けです。子供が読んだらゾゾゾっと怖くなって一人で眠るのが怖くなりそうです。でも、子供独特のあの世界がまだ不思議でいっぱいだった頃に読むのもいいのかもしれませんね。とにかくクセがすごい。何度も読みたくなるホラーチックな本です。見つけたらぜひ手にとってみてください。