少女と言えば、湊かなえの2番目の作品で、第6回本屋大賞受賞した前作『告白』に比べてあまり知名度がない気がします。
しかし、どうやら発行部数100万部を超えているようでベストセラー小説になっているし、実写映画化もされているようです(ちなみに『告白』の発行部数は300万部を超えているのでやっぱり『少女』は知名度がやや弱いのか)。
この『少女』について語りたいのだけれど、周りに読んでいる人がいない。『告白』なら読んだけど…という人がほとんどなのです。
そもそも僕自身も、学生時代に『告白』を読んだ時の衝撃はすごいもので、なんかすごい作者出てきたな!!という感じと、この人の作品をもっと読んでみたい!!という感じで、『少女』が出た時はすぐに飛びつきました。
しかし時間が経って『少女』の内容を思い返そうとすると、ラストにちょっとどんでん返しがあった小説ぐらいなイメージしか残っていないのです。
三作品目の『贖罪』も様々な賞の候補になったりと話題になったわけで、いわばヒット作とヒット作の間に挟まれた『少女』という日陰的な小説。
今、再びその『少女』を読んでみたのだが、こんなにおもしろく、手の込んだ小説だった…という事を今回は語りたいと思います。
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小説『少女』 – 湊かなえ・あらすじ
幼馴染の由紀と敦子の仲は高校に入ってからちょっとギクシャクしていた。高校2年の夏休み前、転入生の紫織から親友の自殺についての話を聞き「自分も人の死を目の当たりにしたい」と思うようになった二人。夏休みになりお互いに内緒で、由紀は病院のボランティアに行き重病の少年の死を、敦子は老人ホームで入居者の死を目撃しようと目論むのだが…
読書エフスキー3世 -少女篇-
前回までの読書エフスキーは
あらすじ
書生は困っていた。「神の残せし印!アスタリスク!」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。読んでいない本のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…
少女 -内容紹介-
大変です!先生!湊かなえの『少女』の事を聞かれてしまいました!『少女』とは一言で表すとどのような本なのでしょうか?
“因果応報、地獄へ堕ちろ”デスナ。
…と、言いますと?正直な所『少女』は面白い本なのでしょうか?
子どもなんてみんな、試験管で作ればいい。
選ばれた人間の卵子と精子で、優秀な人間だけを作ればいい。
引用:『少女』湊かなえ著(双葉社)
コンナ一文カラ始マル“湊かなえ”ノ2009年のヒューマンミステリー長編小説デス。読メバワカリマス。
えーっと、それでは困るのです。読もうかどうか迷っているみたいですので。ちょっとだけでも先生なりのご意見を聞かせていただきたいのですが。
読む前にレビューを読むと変な先入観が生マレテシマイマスノデ…
ええい、それは百も承知の上!先生、失礼!(ポチッと)
ゴゴゴゴゴ…悪霊モードニ切リ替ワリマス!
うぉおおお!先生の読書記録が頭に入ってくるぅぅー!!
少女 -解説-
どんな作者にしてもそうだけれど、大ヒットした次の作品というのは難しいものですよね。
そうですね。どうしても前作と比較されるでしょうし、映画も2は駄作が多いと聞きますから、立て続けに大ヒットを生み出す事はクリエイティブな事を仕事にしている人の一種の壁なのでしょう。
とある人もこんな事を言っていました。「作家のスタートは2作品目から。誰でも一度だけならベストセラーが書けてしまう」「瞬間的にすごい力を発揮する事が出来るプロならごまんといる。しかし、何十年も活躍出来る人間が本物のプロだ」と。
なるほど。確かにそうですね。今回で言えば湊かなえは前作の『告白』がすごいヒットしましたから『少女』はだいぶプレッシャーだったでしょうね。
でもですね、私は実は『告白』よりも『少女』の方が好きなんですよね。
なんというか、前作はどこか別の国で起きたフィクションって感じで読むことが出来たんですが、今回は自分もそんな時期を通ってきたなぁっていう主観でノンフィクション的に触れられるというか。前作も今作も、学生が登場する作品で、思春期特有の危うさを扱っているんですが、『少女』の学生の方がリアルな悪が強いんですよね。
いやーなんというかですね、前作、今作と続けて読んでみて、湊かなえって子供が大嫌いなんじゃね?って思えるほど、子供の無邪気さに悪意を込めている気がするんですよ。もっと詳しく言えば未成年の残酷さを描く事を大切にしている感じですか。大人の私が読んでも子供に怖さすら感じます。
子供の無邪気さですか。アリの巣にお湯を注ぐのを楽しんだり、プチプチ潰して喜ぶ子供みたいな?
そーですね。知らないがゆえに悪が許されるって思っている感じですかね。前回は少年法で守られている年齢の殺人を扱っていましたが、今回は人の死を演出するっていう。どちらも死を軽んじる感覚の登場人物。
それを好奇心で行っちゃう。そんな子どもたちに対して湊かなえは登場人物の大人を使ってこんな感じで論評する。
きみたちくらいのガキが考えてることなんて、すぐにわかる。バカで単純なくせに、自分が思っていることこそが、世の中のルールだと思い込んでいるからだ
引用:「少女」湊かなえ著(双葉社)
あー。確かに僕も学生の時は自分が最強だと思っていました。「俺がルールだ。俺の意にそぐわない事があれば暴れてぶっ壊す!」みたいな。思春期でしたね…。体が大人になっていく過程で自分の心も思考も完成されていると勘違いしちゃうんですよね。
そんな自分の思っていることが絶対だと信じている二人の高校生が壁にぶち当たるわけです。それが「死」の存在。
人の死に目にあうって、高校生ぐらいだとまだない人もいるのかもしれませんね。
二人は仲がよい幼馴染だったんですが、お互いが個々で挫折というか、不幸な目にあっていて、それから関係性がギクシャクしてしまった。そこからは自分の辛さなんて相手にわかるわけないなんて感じで自分の不幸こそが一番だっていう不幸自慢っていうんですかね、不幸合戦が水面下で起こっているんです。
そういう時期ありました。自分は世界で一番不幸だなんていう不幸のシンデレラの自分に陶酔しちゃう時期が。
そんな二人の間に入ってきたのが、転校生の紫織。
物語の展開を作ってくれるキャラの投入ですね。
なぜこの時期に転校してきたのかなんて話題になった時に、親友が自殺しちゃったんだとひょうひょうと語る紫織。二人は自分が一番の不幸だなんて心で思っていたのに、自分の知らない世界の不幸を体験した紫織は別次元の圧倒的存在感を放ってた。
ちなみに右手の握力が3しかない由紀と中学時代日本一になったほどの剣道の達人だったけれど、一度の怪我で剣道を辞めてしまった敦子っていうのが主人公たちの不幸話です。
握力3。その理由を由紀は夜中に水を飲もうとしてガラスのコップで手を切っちゃったって敦子には説明していたんです。
でも、紫織の親友自殺話を聞いて、不幸話で負けたくないと思ったのか、実は痴呆症になったおばあちゃんにやられたのだと紫織に告白する。それを横で聞いていた敦子は、え!?私に言っていた話と違う!なんで言ってくれなかったんだ…なんて友情にヒビが入っていく。
あー。なんていうか親しい人には逆に言いづらい事ってありますもんね。身内の内情とか。
そして由紀は紫織の恍惚とした姿に嫉妬して人の死を観てみたいと願い、敦子は由紀に負けたくないっていう気持ちから人の死を知れば由紀に勝てるなんて考え始める。
ほう。それで物語が二手に分かれていくわけですか。
ちなみに、この二人の友情に日々をいれてしまった事件として小説盗作事件ってのもあります。
まー、そこらへんは読んでからのお楽しみって感じではあるんですがね、『少女』の面白い所は登場人物のほとんどが繋がってくるって所だと思います。伏線回収がバッチリな作品ですね。
って事はその小説盗作事件ってのも関わってくるんですね?
ええ。先程、由紀の握力3の原因が痴呆症になったおばあちゃんって話をしたじゃないですか。あのおばあちゃんの言葉で「因果応報! 地獄へ堕ちろ!」ってセリフがあるんですがね、悪いことしたらそれが必ず自分に返ってくるっていうのが全体に流れているテーマなんです。
ふむ。…あのー、ちょっとだけで良いですから小説盗作事件を教えてください。
一度の怪我で剣道を辞めてしまった敦子って話したじゃないですか。剣道むちゃくちゃ強かったんですけどね、中学3年生の団体戦の決勝で負けちゃうわけですよ。まぁ、野球で言うと江川みたいな怪物だったのです。敦子は。敦子がいたからその中学は決勝までいけた。
江川(笑)…先生はロボなのに良く江川なんて知ってますね。
でも、その決勝は敦子の失敗で負けてしまう。当然その時は周りのチームメイトも気にするななんて言葉をかけるわけですが。
江川も甲子園で最後は押し出しのフォアボールで負けましたね。あの時のチームメイトはお前がいたからここまでこれたから最後は思いっきりストレート投げろよってマウンドでしてたという感動話聞きましたよ。うんうん。
でも現代っ子には裏サイトなんてものがありまして、匿名で悪口が書き込めるものがあるのです。そこに書いてあったのを見ちゃったんです。敦子は。あいつのせいで負けたのに、なんでスポーツ推薦でエリート高に行こうとしてるの意味わかんなーい的な。
うわー…。エゴサーチをしてしまったんですね。敦子は…。それは凹む。
それからというもの、敦子は推薦を受ける事を事態し、別の高校に行くことになったし、事あるごとに過呼吸になってしまうようになります。それで剣道を辞めてしまうのです。でもその書き込みをしたチームメイトは一般受験でエリート高に行ってのうのうと暮らしていると。
そんな敦子に対して、親友の由紀はなんとか励ませないものかと小説を書くのです。まぁ、敦子はスポーツ万能なのに対して、由紀はスポーツはあんまり出来ないけど、頭がいい。それで「ヨルの綱渡り」という文章を書くわけですが。
でもですね、その「ヨルの綱渡り」を書いていたパソコンを学校に忘れてしまった事があって、それをその当時の担任の国語教師が見ちゃうわけです。そして文学青年でもあったその教師は、パクって文学賞に応募してしまう。
しかもですね、それが賞を取っちゃうんですよ。まぁ、賞をとると雑誌に乗るじゃないですか。それを自慢げに話す教師。そしてその冒頭の部分を敦子は知る。敦子はその冒頭だけで、その小説は自分の事を書いたものだと理解し、それを書いたのが由紀だとわかってしまう。
敦子は裏サイトの影響で神経過敏になっていて、過度の不安症。由紀が私のことを恨んでいて、馬鹿にしながら書いていたんじゃないか?なんて思ってしまうわけです。
被害妄想にかられちゃうんですね。わかります。その気持ち。人に悪口を言われているのを聞くと、もう誰も彼もが悪口を言っているんじゃないか…なんて思いが頭を離れなくなります。 でも、由紀は訴えなかったんですか?盗作だ!って。
そうなんです。由紀は訴えなかったんです。
その国語教師はその後すぐに死んでしまったから。
電車に飛び込んだんですけどね。それも疑心暗鬼の敦子からしてしまえば、由紀が恨んで殺したって思い込んじゃうわけですよ。
おぉ…。なんと。それは友情にヒビも入りますわな。ギクシャクしますな。
まー、そんなこんなな事件があったわけですが、その死も二人の目の前で起きたわけではない。二人は後日聞いただけで、死の瞬間に立ち会っていない。紫織は親友がお風呂で手首を切っているのを見てしまったっていうのもあって、やっぱり二人と紫織には大きな違いがあったわけです。
ほほう。それで自分の目の前で死を見るために演出をしていくってわけですね。…なんとも子供の発想は恐ろしい。
まぁ、でもですね、『少女』は一応ジャンル的には青春小説なんです。
あ、っていう事は最終的には二人の友情物語に落ち着くわけですか。
湊かなえ。イヤミスの女王なんて異名をもつほど、彼女の書く作品はイヤミスが多い。読み終わった後にイヤーな気持ちになるミステリー。
え?青春小説って読後感が爽やかになるのがいいんじゃないですか。それって矛盾してません?青春小説でイヤミスって見事にバッティングしちゃってますよ。
そうです。なのでね、全体は一見、二人の友情を描いた簡単なミステリーのような感じになっています。ミステリーってほどじゃないんですがね、トリックがひとつあって、あー、こういうどんでん返しね!って気持ちになります。…が、そこで終わっては、微妙な青春小説や出来損ないのミステリーで終わっていた所でしょう。
どんでん返し系っていかにミスリードを誘うかみたいな所ありますもんね。二人の視点で話を進めるって事はそういう展開になるのかなって想像は出来そうです。
ですがね、ラストのラスト。友情物語で締めくくるのかな?って所で残り10ページほどでですね、モヤモヤを残していくんですよ。イヤーな気分を残していく。それこそ「因果応報! 地獄へ堕ちろ!」が効いてきます。
ほほう。本筋では青春小説の形をとって、最後にイヤミスを持ってくると。
ええ。高校生の友情成長記録かな?って思っていた所に、最後にやっぱり未成年の残酷さを残していく。そこに湊かなえって子供大嫌いなんじゃね?っていう強いメッセージを感じ取れましてね、私は『告白』よりも『少女』の方が好きなんです。
そーいえば『告白』もラストは嫌な感じが残るイヤミスっていうんですか、そういう感じでしたね。でもあれはある意味完結しているというか、モヤモヤは残るけど読後は読み切った!というすっきり感はありました。
そう。『告白』は終始、暗かったでしょう?でも『少女』はギャップがある。青春のような爽やかさからのどん底。そこにイヤーな気分を倍増させる装置があると思うのです。ま、つまりはハッピーエンドが好きな人には全く向かない小説です。
ほほう。とりあえずそれでは湊かなえは2作品目の壁を壊したんですね!?
まぁ、そこらへんは読んだ人の感性にもよりますので、『告白』の方が好きっていう人もいるでしょうし、なんとも言えませんが、工夫は見えましたね。前回も複数視点の書き方してましたが、ミスリードを誘う書き方ではなかったでしょう。でも今回は*(アスタリスク)による工夫があります。
その工夫については解説の方も書かれていますので読み終わった後の再読の楽しみにとっておきましょう。
おお!!…気になって仕方がない。それにしてもアスタリスクって中二病をくすぐる響きですよね。神の残せし印!アスタリスク!
批評を終えて
以上!白痴モードニ移行シマス!コード「ケムール・ボボーク・ポルズンコフ!」
「神の残せし印!アスタリスク!」…って、あれ?僕は一体何を…。
何をじゃないよ!仕事中に居眠りこいて!なにが「神の残せし印!アスタリスク!」だよ。そんな印じゃないよ、アスタリスクは。
え?あれれ?読書エフスキー先生は?
誰だそれ。おいおい。寝ぼけ過ぎだぞ。罰として一人でここの案内やってもらうからな!
えーっ!?一人で!?で、出来ないですよ〜!!
寝てしまったお前の罪を呪いなさい。それじゃよろしく!おつかれ〜
ちょっ、ちょっと待って〜!!…あぁ。行ってしまった。どうしよう。どうかお客さんが来ませんように…。
…あのすいません、少女について聞きたいんですが。
(さ、早速お客さんだーっ!!ん?でも待てよ…)いらっしゃいませー!湊かなえの作品でございますね。おまかせくださいませ!
あとがき
いつもより少しだけ自信を持って『少女』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。
名言や気に入った表現の引用
「一杯の茶を飲めれば、世界なんか破滅したって、それでいいのさ。by フョードル・ドストエフスキー」という事で、僕の心を震えさせた『少女』の言葉たちです。善悪は別として。
自殺は敗北宣言だ。そんな恥ずかしいこと、絶対にするもんか。そう自分に言い聞かせながら、卑屈になることなく、前向きに耐えてきたつもりだ。
死ぬほど追いつめられるようなことを一番打ち明けたくないのは、同じ集団に属している人たちで、なかでも、友だちっていうことを、大人は知らないのかな。
感動的な話だとは思うが、涙は出てこない。所詮、他人の作り話なのだから。きれいな顔をしたあの少年たちは、誰かが創作した役を演じ、お疲れ様、とロケ弁当をもらい、お互い口もきかずに帰ったはずだ。
目の前に姿は見えてるのに、いないってわかるの。それが、本当の死なんだよ。
だから、映画を観ても泣けない。どんなに上手に死の演技をしたって、そこにいるんだもん。
小学校より中学校、中学校より高校、って友だち関係が広がっていくのはあたりまえのことだけど、あたしの場合、広がってるっていうよりは、薄まってるって感じがする。カルピスの量は一緒で水だけ増えていってる感じ。このままどんどん薄まって、ヘンな味の水みたいな人生を送ることになるのかな。
自殺ほどつまらない死に方はない。
想像力が乏しいくせに、自分では知性があると思っている人が、自殺を選ぶ。自分が想像する世界だけがすべてだと思い込み、それに絶望して死を選ぶなど、なんて短絡的なのだろう。
そういえば、前に由紀が言ってたことがある。自分は不器用だという人の大半は、気が利かないだけなんだって。
思いつきで、そのとき自分が話したいことだけを話す。だから、おばさんはイヤなのだ。
死は究極の罰ではない。ならば、死とは何だ。
一言でいうなら、『死』って『退場』ってことなんだ、って悟ったこと、かな? よくさ、勘違いしたヤツが、ゲームオーバーとかリセットとか、そういう言葉使うけど、そうじゃないんだ。それって、自分が世界の中心って勘違いしているバカの発想なんだよな。まあ、あの日までの俺もそうだったけど。『死』ってのは、この世から、退場するってこと。ひとり欠けたからって、世界は何も変わらない。嫌なヤツがひとり退場したからって何も変わらない。ましてや自分が退場しても何も変わらない。世界は終了なんてしない。果てしなく続くんだ。たとえ生まれ変わったとしても、途中参加でしかない。それなら、できるだけ今の世界に長く参加して、自分を含めて世界がどんなふうに変わっていくのか、見届けたくない?
世の中、特別扱いされたい凡人だらけだ。
僕はきみたちくらいの子が怖いんだよ。平気な顔をして嘘をつく。ムキになって嘘をつくうちに、だんだんとそれが本当のことのように思えてきて、逆恨みする。自分のことしか考えていない子たちのせいで、大切なものを失うのは、もう、こりごりなんだ
きみたちくらいのガキが考えてることなんて、すぐにわかる。バカで単純なくせに、自分が思っていることこそが、世の中のルールだと思い込んでいるからだ
世界は広い。遠くまで逃げれば、なんとかなるでしょ。
神様も目的のない才能の貸し出しなんかしないはずだから。
おっさんは自殺なんか絶対にしない。あたしも含めて、うじうじと殻にこもるタイプは意外としぶとく生きるのだ。殻にこもるっていう恥ずかしいことができない立派な人のほうが、自殺しやすいんじゃないかな。
血のつながりは大切だけど、つながってないからこそ割り切れることはたくさんあるはずだ。
人間、体を動かさないと、ろくなことを考えない
ごくまれに、こういう登場人物どうしの複雑なつながりをありえないと言って批難する人がいるのだけれど、それこそがフィクションの魅力なのだ、と小声で反論しておきたい。
ありそうな話が読みたいならば新聞でも広げておけばいいのであって、フィクションの美しさというのは物語のなかでいかに無理なく精緻な関係を構築できるかにかかっている、少なくともそれが美しさのひとつだと思う。
引用:『少女』湊かなえ著(双葉社)
少女を読みながら浮かんだ作品
梨木香歩の『西の魔女が死んだ』ですか。
解説の方は『少女』を読むと湯本香樹実の『
夏の庭―The Friends』が浮かぶと言っていましたが、僕は内容は忘れてしまいましたが大学時代に読んだ梨木香歩の『西の魔女が死んだ』が浮かんできました。でもAmazonで夏の庭を検索すると、西の魔女が死んだが出てくるのでなんか似ているのかも…
レビューまとめ
ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。
いやー、久しぶりに再読してみましたが、湊かなえって最後にイヤーな気分を残す作家だったんですね。イヤミスという言葉を知らなかった僕は今回改めてこの作家の特徴を理解出来ました。
そして前回も解説の部分を読んだつもりだったんですが、アスタリスクのことなんてすっかり忘れていて、再読後にもう一度再読してしまったんで、結局3回読みました。それでもなお面白い。
読めば読むほど敦子が嫌いで嫌いで仕方なかったんですが、それはきっと僕が敦子のような気質の持ち主で同族嫌悪というものなんでしょう。
未成年の危うさを扱った作品だと思うんですが、同族嫌悪を感じてしまうという事は、僕もまだまだ大人になっていないという…。成長したつもりではいたんですが。
高校生の時に思っていた30代ってだいぶ大人じゃん!って感じだったんですが、実際にこの歳になってみるとまだまだ中身は子供なんだと実感してしまう。
いつまでも自分の世界だけにこもっているのかもしれない。
成長しなきゃな、因果応報が来る前に。
そんな事を思う作品でした。
ではでは、そんな感じで、『少女』でした。解説でも書きましたが、爽やかな読後が好きな人には向きませんのでご注意を。
あ、この本、単行本の時は早川書房だったんですが、文庫化されて双葉社になっていました。そんな事あるんですね。
ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございます!
最後にこの本の点数は…
少女 - 感想・書評
少女
¥ 669
-
読みやすさ - 82%
-
為になる - 65%
-
何度も読みたい - 73%
-
面白さ - 81%
-
心揺さぶる - 79%
76%
読書感想文
前作と比べると知名度がない作品だと思うけれど、ぜひ『告白』を読んで面白いと感じた人にはこの作品も読んでもらいたいです。ミステリーというジャンルに分類されていますが、それは忘れて読んだ方が面白いと思います。サクッと読める文体なのでぜひ二度読みをしてアスタリスクをお楽しみ下さいませ。
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